- 米著作権局は、AIの貢献が「機械的複製」か「著者独自の形を与えた物」かを重視
- AIが生成した作品の著作権について、今年中に調整を進める方針
- 結論として、ポリシーは発表されたがなにも決まっていない
2023年3月16日(現地時間)米著作権局は、AIによって生成された素材を含む審査および登録するためのポリシーステートメントを発行しました。
明確なラインが決まったわけではないので、結論としては「何も決まっていない」という内容になっています。
また、米国と日本では法律が異なるため我々に直接影響があるわけではありません。
一方で、数年後あるいは数ヶ月後に日本でも同様の議論が起こる可能性もあります。
米国においてはジェネレーティブAIの生成物の著作権は、2022年8月に一度認められたり、その後取り消されたりと非常に動きが激しい状況です。
ポイントだけかんたんにチェックしておきましょう。
米著作権局はAIが「機械的複製」をしたのか、または「著者独自の形を与えた」のかを重視
同ポリシーでは以下のように発表されました。
AI によって生成された素材を含む作品の場合、事務局は、AI の貢献が「機械的複製」の結果であるか、または著者の「[著者] が目に見える形を与えた独自の精神的概念」の代わりであるかを検討します。
引用元:federalregister.gov(Google翻訳):筆者による太字装飾
具体的になにを「機械的複製」とよぶのか、独自の形を与えた精神的観念とはなにかについては言及されていません。
言葉そのものが抽象的ですから、これから判例や追加のポリシーが出るまでは基準はあやふやなままと捉えてよいでしょう。
ただし、米著作権における過去の裁判では、猿が撮ったセルフィーには著作権が発生しないという判決もありました。
参考:Appeals court blasts PETA for using selfie monkey as ‘an unwitting pawn’
著作権は著作物の製作者である著作権者に与えられるため、人間でない存在には与えられないという考え方です。
この考え方を踏襲するならば、ジェネレーティブAIで生成されたままの文章や画像、映像には人間の手を介在していないため著作権は与えられないと考えて良いでしょう。
AIが生成した作品の著作権について、今年中に調整を進める方針
今年後半にかけて追加の法的政策を進めていく方針も、同ポリシーで発表されました。
事務局は、AI によって生成された作品が、この声明で扱われていない他の著作権の問題に関係していることを認識しています。これらの問題を幅広く掘り下げるために、政府機関全体のイニシアチブを開始しました。とりわけ、事務局は今年後半に調査通知を発行し、AI トレーニングにおける著作権で保護された作品の使用に法律がどのように適用されるべきか、結果として得られる出力の取り扱いなど、追加の法的および政策的トピックに関する一般の意見を求める予定です。
引用元:federalregister.gov(Google翻訳):筆者による太字装飾
今回の発表は、たたき台や基礎としてのポリシーを発表したに過ぎないのかもしれません。
ポリシーの結論も、将来追加のガイダンスを発行する可能性があると締めくくられていました。
結論として、ポリシーは発行されたが何も決まっていない
1万字を超えるポリシーでしたが、その内容は「まだ何も決まっていない」というものでした。
ジェネレーティブAIの著作権問題では『Zarya Of the Dawn』が有名です。
2022年9月に米著作権局に認められ著作権を与えられたものの、2023年2月に一度認めた著作権を一部取り消されたのです。
このとき取り消された理由は、AIが出力する結果をユーザーが予測できないためとのこと。
参考:2023.02.21 FINAL Zarya of the Dawn Letter w Enclosures
著作権の取り消しが一部に止まった理由は『Zarya Of the Dawn』はAIが生成した画像と著者によるストーリーで構成されたコミックであるため、著者が担当したテキストの部分のみ著作物として認められた形です。
一度認めたものを取り消したことから、米著作権局の慎重さが伝わります。
マンガやゲームなどのIPを多く抱える日本でも、今後同じ問題が起こるのは確実です。
世界的に見れば前例となる米国の動きは、今後も目が離せません。
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