ライターの『人脈形成戦略』個人で取材するコツをまむしさんに聞いてみた!

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お仕事としてなら「取材させてください!」は言える。

普段は会えるはずもない人から、取材を通してお話しを聞けるのはライターの役得だ。

でも、仕事ではないただの個人の発信になると「取材させてください!」がなかなか言えない

そう思っていたら、顔出しなし、実績ドヤなしのXアカウント『まむし』さんが現れた。1年以上見続けていたけれど毎週のように新しい人と対談したりそれを記事化したりしている。

どのように人と繋がり、取材依頼をしているのかを、まむしさん本人に聞いてみた。

お話しを聞いてわかったのは、取材はもっと軽い気持ちで声をかけていいということでした…

まむしさんプロフィール(Xより)

某メディア企業で編集部門責任者/『誰も教えてくれない編集力の鍛え方』出版📕編集や執筆関連セミナーの講師も/MBA取得/👧3歳/かわいい

>>まむしさんのXアカウントはこちら

食事休憩の時間にZoomを繋いでもらい、お話を伺いました。担々麺を食べたそうです。

取材相手から情報だけを得るライターか、人脈を作れるライターか

チキン:まむしさん、今日はお忙しい中ありがとうございます!まむしさんの発信を1年以上間近で見ていますが「あの人が気になるから声をかけてみよ」からの「今度⚪︎⚪︎することになった」のスピード感が早すぎて毎回ビビってます。どうやって人に声をかけて、それを次のアクションに繋げているのかなど聞かせてください。よろしくお願いします!

まむし:よろしくお願いします。チキンさんは今ライター4年目でしたっけ?人脈形成の重要性を意識するのは大体それくらいですよね。

チキン:そうなんですか?

まむし:ライターキャリアが3年目くらいになると、仕事を通しての成長実感が得にくくなりますよね。最初の頃は構成1つ作るだけで学びが多いけれど、仕事に慣れると、1つ1つの仕事から得られる学びが減って、効率は上がっているけれど成長はゆるやかみたいな。

チキン:たしかに。

まむし:この時期になると、仕事における成長の差分を生み出すものとして『人脈』が重要になる気がします。人脈を通して新しい仕事や人との出会いがあったり、そこから成長のきっかけが生まれたり。

だから記者3年目当時の僕は裏KPIとして『facebookの友達⚪︎百人』とか目標立てて追いかけていましたよ。取材のあと、僕からfacebookで友達申請を送っても承認してもらえるくらい気に入られるにはどうしたらいいのかな。と考えて工夫していました。

チキン:なるほど、facebookだと他のSNSの単なるフォローと比べても、より近しい距離な感じもしますね。

まむし:そうそう。ネット記者など毎日取材をしているような方でも、毎日取材してるのに「取材相手と仲良くなれる人」と「なれない人」って結構パキッと分かれているんですよ。例えばチキンさんにAI関連の取材をするとして「AIについて教えてください」と小一時間AIの話をして帰ってくる人と、取材相手に関心を持って相手がどうしたら喜ぶかまで考える人の違いとでもいうか。

そうなると、取材で情報だけとってくるなら、社内の人間ではなく外部に委託した方が良くて、社内のライターにはインタビューを通して取材相手との人脈を育てて欲しいなと思います

チキン:外部ライターの立場からすると、多くの取材相手と人脈を形成できていれば、選ばれる理由のひとつとなり得そうですね。

まむし:そうだと思います。ライターさんが取材相手のキャラをなんとなく捉え、どう声をかけると答えてくれそうか知っていると強みになるかもしれませんね。

例えとして適切じゃなさすぎることこの上ないですけど、昔見たドラマのSPECで主人公が信頼関係のある死霊を呼び覚ましてその人の能力をいつでも使えるっていうのが作中最強クラスの能力だったんです。そういうのに憧れてもいます。

チキン:SPEC見てないんですが、強そうなことは伝わりました。

相手もきっと「出会いがあるといいな」とどこかで思っている

チキン:仕事としての取材なら大義名分を掲げて「取材させてください」と言えるんですが、個人ではなかなか声をかけられず、人脈を作るのは難しいと思っています。ところがまむしさんは本業と切り離した「まむし」という人格で個人の繋がりをガンガン作っているのが本当にすごいと思っていて、ファーストコンタクトとかってどのように始めているんですか?

まむし:そもそも、SNSをやっている人には声をかけていいんじゃないですか?Xとかやってる以上、相手もなんか「出会いがあるといいな」ってどっかで思っているでしょうから。Xであれば興味のある相手にリプでジャブを打つといいかなと思いますね。「その話、いつか詳しく聞いてみたいです!!」みたいな。

相手の方から「いいですね」みたいなまんざらじゃない反応があったら「この前言ってたこと実現させたいんですけど、なんか本当にいいですか」とDM送ってみるみたいな。

チキン:そんな軽い感じなんですね。

まむし:そうですね。「コミットメントと一貫性」といってマーケティングでもよく使われる手法なんですけど、軽く合意をとっておくと相手も断りづらいみたいなテクニックを使っています。笑

相手が有名人などの場合は、その人の本を読んで感想を送るとか、セミナーやオンラインセミナーに参加して感想を送るとか、そういうワンクッションを置いて反応がもらえたら声をかけてもいいんじゃないですかね。

チキン:自分が声をかけても相手になんのメリットもないというか、一方的にいいお話しを聞かせてもらうだけになることに抵抗を感じてしまうんですよね。これって考えすぎですかね。

まむし:うーん、考えすぎじゃないですかね。

チキン:(そうなんだ…)

まむし:単純に「話を聞かせてください」って言われるのは嬉しくないですか?自分がされて嬉しいことはきっと相手も嬉しいというから。逆もまたしかりで、変に仰々しくやるよりは友達をランチに誘う感覚で声をかける方が相手も気軽でいいと思います。

ある程度の配慮は必要。でも気にしすぎはよくない

チキン:人脈形成について、自分が重く捉えすぎていたんですね…。とはいえ「友達をランチに誘う」とまで軽くは考えられない気がします。今まむしさんとお話ししている環境もそうですが、本当にランチに行くわけでなくZoomですし、録音もしていますよね。ちょっと緊張してしまいませんか?

まむし:確かに、「気を使わせない」「手間を取らせない」みたいな工夫はしますね。例えばZoomは1時間でキッチリ終わらせるとか、その日のうちに原稿は渡すとか。でもその程度かな。

チキン:(今日中に原稿出さなきゃ…!)あと料金についてはどうでしょう?媒体によっては取材相手に報酬をお支払いすることもありますし、取材相手が普段有料でお話ししていることを個別に無料で聞いていいものか抵抗もあるんです…。

まむし:あぁ、これは僕がもともとネット記者だったこともあると思うので説明すると、記者って基本的に取材でお金を払うという概念が無いんですよね。情報を聞くことは社会のためだという意識で、金銭のやりとりがでることに違和感すらあります。そういうマインドは大切じゃ無いですかね。

一方あたりまえの話ではありますが、相手が話をしてくれることに敬意を払うべきではありますね。「開示できる範囲でかまいません」などの前置きは伝えていると思います。

チキン:なるほど、金銭についても考えすぎでしたか。それではトピックが既出かどうかについてはどうでしょう?たとえばXで面白い人を見かけて「話が聞いてみたい!」と思ったものの、実はその人が何度もメディアに聞かれている内容だったら失礼じゃ無いでしょうか?「調べたらわかるだろ」とガッカリされませんか?

まむし:どうでしょう…。多くの方は何度も同じことを聞かれるのに慣れている気がしますよ。稀に「調べてこい」と怒る人は確かにいますが、15年近くこの仕事をしてきて2人くらいしかいませんから、気にしなくていいんじゃないですか。

チキン:こ、これも気にしすぎでしたか……。

まむし:あと、入り口としては似た質問から始まったとしても、その後の話の展開でいろいろ変えられると思います。情報だけ聞くんじゃなくてその人のパーソナルなことを聞けたりするとそれこそ仲良くなれるかもしれないですよ。

発信の一貫性を重く考えすぎず、ガンガン聞いていく

まむし:チキンさんは、取材したい人とかいるんですか?

チキン:ゆるく生きているフリーランスとかの話は聞きたいですね。「稼いでます!」みたいな話ばかりでなんか疲れちゃって、それより地方で午前中は海に入って、午後に仕事して、夜はバンドやってます。みたいな人に話を聞いてみたい。

まむし:いいですね。話を聞きたい相手が居るなら「そういう方の事例を今色々聞いていて記事にしてるんです」みたいな感じを出して、いけそうな気もしますね。

チキン:それでいうと、チキンとしての情報発信の一貫性をどう保つか悩みます。一度そういう「ゆるく生きてます」みたいな人を取材しちゃうと、その後「AIでバリバリ稼いでます」って人の情報を発信しにくくなるかもとか。

まむし:うーん、別に同時並行で両方やってもいいんじゃないですか。たとえば「ゆるく生きるフリーランスは第6回までのシリーズなんです」とか言っちゃって。あとは「実はその2つって繋がってて」みたいな話にするとか。そうすると、なるほどってなるかもしれない。あとぶっちゃけ相手もそんな気にしてないと思いますけどね。「お前AIの話やるって言ったのに、その後ゆるフリーランスの話してるじゃねぇか!」って怒る人居ます?笑

チキン:情報発信をする以上、話題は統一性があった方がいいと思っていましたが、気にしすぎていたかもしれないですね。

まむし:チキンさんの中で繋がってるならいいと思うし、とりあえずやってみるといい気もしますけどね。あと、取材してみるとその人ならではの孤独みたいなのを聞けたりするんですよ。「気軽に相談されなくて悲しい」とか。そういうのを知って「じゃあ自分は無邪気に話しかけよう」だとか、そうして良き理解者になれると人脈に育っていくんじゃないですかね。

久しぶりの連絡でもまるで前日の続きのように

まむし:相手の良き理解者になって繋がっていると、こちらが困った時に助けてもらえるんですよ。記者時代に繋がったfacebookの友達にも助けられました。4年目で転職したんですが、その後「メディアもこれからなんですがいい記事にしますので取材させてください」と連絡できる人がたくさんいて助かりました。

チキン:それはすごい。中にはしばらく連絡していない人もいたんじゃないですか?気まずくならないんですか?

まむし:これも軽い感じで話しかけちゃいますね。意外と相手もこちらを覚えてくれていますよ、セミナーで隣の席だった人とか、数時間しか接点ないのに覚えてくれていたり。あとはfacebookのメッセンジャーだと履歴が残ってますからね、相手との会話履歴もすぐ遡れて、半年前の話題だろうと前日の続きのように会話できます。

繋がってから5年、10年と時が経つとお互いに出世していてできることが増えたり、スケールが大きくなったり、こういう変化も楽しいですね。

チキン:すごいなーとは思うんですが、返信を失念したまま時間が経っちゃった人って、用ができたからこちらから話しかけるのは失礼なのかなと気後れしちゃうんですが……。

まむし:それはお互い様じゃないですかね。「あー、返信忘れてましたー」とかで軽く流して話しかけていいと思います。

チキン:ここでも僕は重く考えすぎていたんですね。

「やっちゃえ!」で作るライターの人脈

チキン:今日はお話しを聞き始めて5分くらいで、答えが出ちゃってた気がします。あまり重く考えず、相手に興味を持ってランチに誘うように軽く声をかけるだけですね。

まむし:そうですね。今日の話、中学生の恋愛相談みたいな感覚でした。相手のことを気にしすぎて行動できていない子に「言っちゃいなさいよ!」「やっちゃえ、やっちゃえ!」みたいな。笑

チキン:やめてくださいよ恥ずかしい!笑。でもそうですね。本当にやっちゃうだけ、声をかけるだけだったんだなと気付かされました。

まむし:そうです。やっちゃってください。

チキン:とりあえず、AIのニュースレターで取材したい人に声をかけてみます。

まむし:おぉ!楽しみにしています!

「取材を依頼するなら相手にもメリットがないといけない」そんな思い込みをとっぱらい、もっと軽く声をかけていけるよう背中を押してもらえた1時間でした。「チキンがそうしたように、Zoomで話を聞きたいという人が他にも来たら、まむしさんは嬉しいんですか?」と聞くと「嬉しいです」と即答する姿勢に、たくさん人と繋がる秘訣を見た気がします。

お昼を食べながら話してもらったせいで「担々麺の汁が目に入った」と痒そうにされていましたが、これに気後れすることなく、「また話を聞かせてください」と声をかけてみようと思います。

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